中3受験生に英語を教える(1)基礎編

こんにちは。英語の翻訳者カンサンです。昨年の夏休みから3ヶ月程度、死ぬ気で子どもに英語を仕込んだので、どなたかの参考になればと思い、その手法や使ったテキストなどを記しておこうと思います。ちなみに私は帰国子女等ではなく、中学1年生ではじめて英語を習いはじめて、気づいたら翻訳者になっていた、みたいなスペックです。

長いので3部作にしました。

英検2級合格で、一発逆転を狙う

昨年の夏休み前に中学校の三者面談に行き、初めて我が子(仮名Nちゃん)がめっちゃくそ勉強してないし、このままだと行く高校がないっぽいことを知らされました。翌日、登校したNちゃんに先生が「あの後お母さん大丈夫だった?(怒られなかった?)」と聞くほど、私の顔色が悪かったらしい。

この時点での偏差値とか、成績表とかを曝して「這い上がれ、ジョー!」みたいな展開にしたいところですが、もう全てを抹殺したみたいで叶わず。でも、はっきりしているのは「英語だけじゃない、全教科的にもうあかん」って感じでした。Nちゃんもさすがにヤバいと思ったようで、「お母さん、私、もう一発逆転で勝負をかける。今から全教科勉強しても成績上がらないし、間に合わない。11月まで英語だけ勉強して、英検2級に合格する。そんで推薦を取る!」と策を練ってきました。確かに今から手広くやっても間に合わない。英検2級なら私が死ぬ気で教えれば間に合うかもしれない!ということで、「じゃあ本当は親子割引で時給1万円は取りたいところだけど、あなたが本気出すなら家庭教師代は免除してあげる。その代わり文句をひとつも言わずについてこい!」ということで、教えることになりました。

教える側の目標の設定と道具の準備

目標は英検2級合格と設定できたので、現時点での英語の出来具合をチェック・・・と思ったんですが、チェックする必要もなかった。マジで全然できない。be動詞と一般動詞の違いも危ういし、基礎的な文法知識もゼロ。学校で何学んでるの?っていうか、塾は何やってるの?俺の支払った塾代はなんだったの!っていう怒りが沸いてきましたが、本人に問いただしても「え~なんか適当に解いても時々当たるからー」とか言ってる始末。原因を掘り返しても意味がないので文法の基礎からやり直しを決意。残された時間を考えると、英検には間に合わないかもしれないので、その後の英語学習につながる知識を授けることを第一目標としました。基礎ができたらあとはひとりで応用を学んでくれ!と。

道具については、本当は塾の教室でも借りたいぐらいでしたが、以下の道具を用意し、子ども部屋の机で隣に座って教えました。

ホワイトボードは近所のホームセンターで購入したので、リンク先のものとはちょっと違いますが、できるだけ大きいモノを買って、机の上で立てかけてつかいました。マーカーはすぐにかすれてくるので、詰め替え用のタイプがよかったです。ホワイトボード消しもすぐに消えなくなってイラっとするので、取り替えがきくタイプをオススメしたい。(※リンクはアフィです)

紙に書いて教えてもいいんですが、ホワイトボードを使う方が「塾っぽい」演出になって、親子の甘えが遮断できそうかなという狙いもありました。ただ、ノートを取らせると時間がかかるので、基本ノートは取らせず、「その場で集中、その場で考え、その場でマスター」を心がけました。(私の時間がもったいない)

参考書の選び方

何のガイドラインもないと教える方もつらいので、1冊核となる文法書を選び、それに沿って進めることに。丸善本店の英語参考書/英検売り場を端から端までチェックした結果、文法の要点を基礎の基礎から簡単な日本語で示している以下の本を選択。東進のテキストの多くは、大学センター試験レベルを目指す人に向けているようで、基礎から丁寧に解説している良書が多い気がします。

1.大岩のいちばんはじめの英文法【超基礎文法編】

この本の素晴らしいのは、品詞から始まるところ。文法を教えたくても、品詞すらわかってないので、教えようがないんですよね。この本は、「副詞は、名詞以外を飾る(説明する)言葉のこと」と極めて簡潔な説明だけど、学習者を迷わせないのがすごく良いと思いました。独学者向けのテキストなので、ひとりで時間をかけて学習するのも良いと思いますが、こちらは時間がないので、このテキストの構成、教える順番を活かしつつ、独自の解説を重ねていきました。

授業の進め方としては、テキストに記された例文を用いて、ひととおり概要を教えた後は、「その場で集中、その場で考え、その場でマスター」を徹底させるため、とにかくたくさん質問し、答えさせました。間違ったらその場ですぐになぜ間違えたのか、何がわかってないのかをえぐり(痛い)、正解を示した上で、すぐに類似した例文を示してもう一度質問する・・・を繰り返します。

品詞と5文型だけで1ヶ月ぐらい?

最初の1ヶ月ぐらいは、品詞、5文型に集中。ここが一番つらかったですね。辞書を引く習慣もないので、品詞なんて考えたこともなかったわけです。まずは品詞ってのが大事だってことをわからせるために、ひたすら例文の品詞を答えさせる早押しクイズ状態。例えば、”I am a good teacher.”という例文をホワイトボードに書いて、「じゃ、頭から品詞言って」と問い、「Iは、代名詞で名詞、amはbe動詞で動詞、aは冠詞、good は形容詞、teacherは名詞」とか言わせるわけです。そのときにただ品詞を丸暗記させるのではなく、「冠詞は後ろに名詞が来るよっていう合図で、次に来る名詞までをひとまとまりにする働きがある」ことなど、細かく機能も理解させるようにしました。だんだんと慣れてくると、”I am a good teacher.”に対し、「・・・冠詞のaは、形容詞のgoodをすっ飛ばして次に出てくるteacherまでをひとまとまりにしている(a good teacherというまとまりがわかる)、形容詞のgoodはすぐ後ろの名詞を修飾している」とか言えるようになりました。これぐらい言えるようになって、リーディングの基礎ができたかなとちょっとホッとしたのを覚えています(ちなみにこの辺りの解説も上記の本にはきちんと載っています)

品詞がある程度わかってくると5文型の説明も比較的スムーズに。これもウルトラ早押しクイズ状態で、出てくる英文全てに対し5文型を答えさせました。ここで一回「5文型なんてやらなくてもよくない?意味わかんないよ!」と大げんかになったんですが、「5文型わからずに英語が書けたり読めるっていうならやらなきゃいいよ。でも5文型を使わずに英文の読み方をお母さんは教えられる自信がないから、5文型を学ぶ気がないならもう教えられない!」と言い切ったところ、渋々覚える気になったみたい。でも最終的には「お母さん、英語なんて5文型わかればチョロくない?みんなー5文型大事だよ~」とか調子こいてましたので、けんかした甲斐があったのかとw

リーディング教材の追加

文法と並行しながらリーディング教材にも取り組みました。すっかり東進の回し者みたいですが、リーディングには以下のシリーズを使いました。

2.英語長文レベル別問題集 2基礎編 (東進ブックス レベル別問題集シリーズ)

この本はシリーズ化されていて、この2.基礎編は「公立・私立高校合格レベル」、次の3.標準編は「センター試験レベル」ということだったので、標準編まで終わらせました。

この本の良いところは、問題文(英文)の行間が大きく開いていて、書き込みしやすいこと、それから「構文分析」というページで、SVOCや修飾のまとまりなどを示してくれている点だと思います。行間とかどうでもいいように思われるかもしれませんが、こちとら時間がないので、いちいち英文を書き写したりすることなく、じゃんじゃん書き込めるのは使い勝手がよかったです。基本的にこのテキストは「宿題」とし、自分でSVOCを埋めていくようにさせたので、その解答として「構文分析」のページがあるのはとてもよかったです。

記念すべき第1問目。所々SVOとか書いてる。後半はもっと書けるようになりました
構文分析の例

ここまでで、だいたい1ヶ月ぐらいです。夏休み中だったので、午前中1時間ぐらい教えて、リーディングのテキストの宿題を出し、夕方仕事が終わってから2時間弱ぐらい宿題のチェックと次の単元を教える・・・という日々でした。死ぬ。

親が子に教える難しさより・・・

親が子に教える難しさも多少ありましたが、それよりも私の性格とNちゃんの性格のズレが苦しかったですね・・・。Nちゃん、ちょっとADHDっぽいところがありまして、ちょっとでも気になることがあると、もう全然集中しないんですよ。「あ、洗濯物干さなきゃ」とかどうでもいいだろ、ソレ!っていうようなことも、気になるともう勉強できない。こちらも教える集中力をそがれると、めちゃくちゃイラっとするので、「そんなこと言わずに今すぐこれやれよ!」ってなり、端から見たら「似たもの親子」でしかないんですけど、辛かった・・・。で、解決策としては、ちょっとでもNちゃんの気がそれたら、私が休憩を宣言してしばらく時間をおくことにしました。「Nちゃんさ、ADHDって知ってる?ぽくない?辛くない?」って途中で聞いたら、「え?むしろお母さんぜったいそうだって思ってんだけど。」とか言われて、「まぁどっちでもいいか」ってうやむやに。

親子の難しさは甘えが生じることに起因するような気がして、ホワイトボードを導入しましたのは前述の通り。他に、すぐに「お母さん、一応英語でごはん食べてるのに、タダで自分のノウハウ教えてるから!」とか「誰のおかげ?」って言ったりしてました(今でも言うけどw)。親だから教えてるわけではなく、プロとしてのこれまでのノウハウを授けてるという体を保つようにしました。この辺りのさじ加減は子の性格にもよるかもしれませんね。

さて、次回は基礎から次の段階に進んだ話と英検対策をどうしたかを書こうと思います。