醤油ラーメンからとんこつラーメンを作り直す話

超久しぶりの更新です。(更新方法を忘れてググりました)

2018年10月25日~26日まで、日本翻訳連盟(JTF)主催の翻訳祭が京都で開催されました。毎年東京開催でしたが、今年は京都。行くしかないだろうっていうことで、私も2年ぶりに参加してきました。

全体の印象は機械翻訳中心。まぁ個人翻訳者よりも翻訳会社が主流の連盟なので、そういうことだろうなとは思います。個人的にはニューラル翻訳のしくみのセッションはすごく勉強になりました。ちょっと誤解していた面もあったので、今後、勉強を深めていきたいと思いましたわ。もちろん基調講演の飯間 浩明さんのお話も、IPS細胞のセッションも面白かったんですが、やっぱり目撃者として「醤油ラーメンからとんこつラーメンを作り直す」話は書いておこうかと思います。

予めのお断りとして、本稿を起こすつもりがまったくなかったので、メモは一切取っておりません。これから先に記すことは、あくまで私の印象・感想を含んだものであり、登壇者の発言・その意図をそのままお伝えするものではありません。

さて、事件は2日目の最終セッション「あなたがつくる医学翻訳の未来」で起こりました。確かスライドは「医学翻訳に未来はあるか?」というタイトルだったと思うのですが、セッションを聞いた結果、正直「ないな」って感想しか抱けなかったです。(むろん私は生き残りたいし、そのための努力は惜しまないですけど、業界が向いている方向に未来はない、と感じましたよ・・・)

実は「なんかつまんないな。このセッション失敗だった」と思っていたんですが、このラーメン発言で目が完全にさえました。「ぽかーん」が私を襲う・・・。

文脈を補いますと、
翻訳の品質は大切(「医薬翻訳十箇条」の紹介)

機械翻訳は質にばらつきあるよね。だからそこを人間が補ってあげて、クライアントが望む品質まで高めてあげようね

ラーメンのイラストをどーんと表示

機械翻訳と人間翻訳者の関係を示す例として、ラーメンを使って説明しますっておっしゃったので、最初は機械翻訳が作ったまずいラーメンだけど、せめて人間がおいしいチャーシューでも乗せてあげようか、みたいな話の展開だと思ったんですよ。でも全然違った。右斜め上だった。

ここでわたくし、ツイートせねばとおもむろに慣れないAndroidを取り出して実況開始。まぁ詳細はTwitterをたどっていただくとして、常識的に考えてこの例えはないですよね。絶対不味いし、ダメなラーメン屋としか思えない。。。

これについて、議論開始だとモデレーターは言いながら、フロアからの挙手は認めず指名制です。ここは学校かよ!

指名された人が何を言っても、回答はすべて翻訳者も機械翻訳を使った方がいい、ポストエディットの仕事をやった方がいいと全力で機械翻訳推し。

途中から挙手に切り替わったので、「ポストエディットをやると、翻訳能力が落ちると先輩から聞いている。その点はどう考えているのか?」というナイス質問があがったんです。が、その回答は、「ポストエディットは、機械がやった翻訳を編集するというよりブラッシュアップすること。ご自分の(人間の)翻訳をやるのと変わらないからこれは翻訳の仕事だ」みたいなことを言うにとどまり、翻訳ってどういう仕事だと思ってるのか聞いてみたい感じすごい。

で、私も質問をしましたよ。きっとこのフロアの人は大半がパネリストの会社とお取引があるだろうと思ったので、みんなが聞きにくい「レートはどうなってんねん!」を直球で。

残念ながらはっきりとした回答はなく、「チェッカーの支払い分をまわすつもりなので、下げるつもりはないけど、納期は厳しくなるよね」みたいなことを言ってました。チェッカーはこれから仕事なくなるから、ポストエディットやったらいい発言もあり。

私が鬼瓦みたいな形相してたせいか、マイクを戻してもらうことはできず、セッションが早めに終了。未来ない感じすごくて疲れました。

でも、今思うと、この「醤油ラーメンをとんこつラーメンに直す」というたとえは、ある意味的を得る(的を射る)例えだったのかもしれません。私たちから見たら、「醤油ラーメンからとんこつラーメンを作ったら絶対まずい」=「機械が訳したものを人間が直したって良いものはできない」と読み替えることができますよね。

同時間帯に別室で行われていたHow Machine Translation can help you mostというセッションに出た方のお話だと、すごく面白かったそうで、機械翻訳の良い部分を感じたそう。

同じようなテーマで話していても、ふたつのセッションは北風と太陽みたいだなと思いました。